STORY08

強みの組織力を発揮して、教育分野のIT基盤提供を実現。
確かな信頼を獲得したソリューション戦略。

お客様を成功に導く懸け橋BRIDGE FOR INNOVATION

背景
2019年度より取り組みが進んでいるGIGAスクール構想で導入した約12万台の端末に対して、構成変更に伴う再設定が必要
お客様の課題
新型コロナウイルス感染症の流行による休校のリスクがある中、短納期でミスなく構成を変更する
富士フイルムBIジャパンの解決策
これまで積み上げてきたノウハウを活かした「効率的な作業設計」により、展開作業の徹底的な自動化、手順書の継続的改善による作業品質向上などを行い、提供品質の維持や納期達成を実現

人口200万人以上を抱える某自治体のお客様の課題は、GIGAスクール構想により導入したタブレットPCの再設定を速やかに行うことにあった。富士フイルムBIジャパンは本案件を落札し、小中学校300校以上約12万台の端末に対し3.5ヵ月(作業可能日数66日)で再設定作業を行うため、作業の自動化を構築した。現地との徹底したコミュニケーションによる状況把握とスムーズな品質の安定化により、社内賞を受賞するまでの功績をおさめた。

MEMBER

  • SYSTEM ENGINEER2009年入社

  • SOLUTION SALES2020年入社

タブレットPC12万台の再設定を、短期間で完遂するために。
富士フイルムBIジャパンが打ち出した唯一無二の「戦略」。

義務教育を受ける児童生徒に1人1台のコンピューターと高速大容量の通信環境を提供する文部科学省の「GIGAスクール構想」がスタートして、3年あまりが経った。すでに多くの自治体がGIGAスクール端末の整備を進めているが、自治体の規模が大きい場合、端末台数も大規模となるためスムーズに導入が進まないケースも少なくない。200万人以上の人口を有するある自治体のお客様はすでに約16万台のGIGAスクール端末を導入していたが、ネットワークの構成変更に伴い、端末を再設定する必要に迫られていた。

「その自治体のお客様とはすでに取引がありましたが、これまでは複合機の入札案件がほとんどでした。そのため、複合機以外のソリューションサービスを提供できていないことが、当社にとって大きな課題でした。このような中でGIGAスクール案件の公示があったのですから、またとないチャンスです。本案件により、複合機以外の領域でも当社の価値を提供できることをお客様にご理解頂けると考えました」と、アカウント営業。SEも当時のことを振り返ってこう語る。「社内で協議した結果、『本案件をなんとか取りに行こう』と判断が下されました。しかし、当社は過去にも他の自治体でGIGAスクール端末の導入を経験していましたが、今回のような大規模案件は初めてでした。さらに、半年間のうち準備期間を除くと、作業にかけられる期間は約3.5ヵ月。実質66日しか残されていません。この期間内にいかにしてスムーズかつ安定した品質で作業を進めていくか。そのための体制づくりが本案件における最大の課題でした」。そして、社内の関連部署と調整を図り、300校以上の小中学校、約12万台のタブレットPCの設定変更が出来る体勢を整えました。「ここまでの規模になると、単に人海戦術を敷くだけでは達成が難しいことが容易に想像できます。そこで、他の案件で培ってきたプロジェクト管理のノウハウを活用し、『作業の自動化』と『コミュニケーション重視のプロジェクト管理』を軸に据えた戦略を打ち立てました」。

作業の自動化を図り、人によるばらつきを抑える。
現場との密なやり取りで、PDCAを回して品質を安定化。

富士フイルムBIジャパンは、全国の拠点に勤務するカストマーエンジニアがお客様先に導入した複合機の点検・修理や、サーバ構築・データ移行などのサービスを担っている。今回の案件では、SEやアカウント営業に加えて、カストマーエンジニアも名乗りを上げて、プロジェクトのメンバーに加わった。そして、協力会社にも協力を仰ぎ、100名の作業者が一斉に端末の設定変更を進めることになった。「今回、最も検討を重ねたのが、品質のばらつきを抑え、安定化させるための方法です。手作業で行うと、人によってどうしてもばらつきが出てしまうため、自動化が必至でした。現場での経験が豊富なカストマーエンジニアと一緒に、手作業を可能な限り減らし、作業の自動化を検討していきました」。

もう一つ、SEが重視したのが、密なコミュニケーションによる徹底したスケジュール管理である。「お客様が最も懸念していたのが、納期遅延です。導入先の小中学校では日頃からタブレットPCを授業で使っていますから、わずかな遅れが授業に影響を及ぼしてしまいます。そのため、納期遅延は絶対にあってはならないことでした」。SEは分けられた3つのブロックにそれぞれリーダーを立て、各学校に作業リーダーを配置し、作業リーダーからブロックリーダー、そしてSEに報告を上げるコミュニケーションルールを設けた。オンライン会議ツールを常時接続し、関係者間で常にやり取りできる体制を構築。日々、複数回のチェックポイントを設けて、現地の状況を着実に把握・管理することにした。

こうして入念に準備を重ねた上で作業に取り掛かったが、しばらくの間は、現場のコントロールに奔走したという。「1校あたり5名の作業者を配置し、1日15校のペースで進めていきました。事前に作業の自動化を行い、手順書も配布していましたが、初めての作業を行うのですから序盤はどうしても作業効率が悪く、慣れるまでに一定の時間を要しました。今回は100名規模の人員を投入したため、人によるばらつきも大きく、現地の状況を見ながら適宜、手順や手順書の内容をアップデートさせていきました。作業者からのフィードバックを受けながら継続的に手順の改善を行っていくPDCAのサイクルを回し続けたことで、早い段階で品質を安定化させることができました」。

特にオンライン会議ツールの常時接続は、想像していた以上の効果があった。現場の状況を「見える化」したことで、トラブルが起きたときもタイムリーに現場の状況を把握し、適切な対応ができたからだ。「毎日、端末の再設定を行っている15校の状況を遠隔で把握しなければならないので、タイムラグが心配でした。しかし常時接続していたおかげで、現地のリーダーも何かあったときにすぐに報告を上げてくれる。オンライン会議ツールが現地と私たちを結ぶホットラインのような役割を果たしてくれたのです」。

些細なトラブルが大きなトラブルにつながるリスクが。
大規模案件ゆえの苦労を乗り越え、社内賞受賞

もちろん、大規模案件ゆえに現場のトラブルは尽きない。些細なトラブルを見逃すと、トラブルが巨大化してしまうリスクもある。例えば作業者から「100台と聞いていたが、現地に行って確認したら90台しかありませんでした」と報告が上がってきたことがあった。よくよく聞いてみると、生徒が家に持ち帰っているため、すべての端末が揃っていないという。「生徒が家に取りに行って戻ってくるのを待ちます」という報告は日常茶飯事だったのだ。SEはこのような報告一つひとつに対して、適宜、判断を下していった。

新型コロナウイルス感染症の流行による学級閉鎖に頭を悩まされたこともある。「新型コロナウイルスの感染状況を考慮して教育委員会が休校の判断をし、一斉に通知を行うのですが、この情報がなかなか入ってこない。教育委員会内の各部門で調整を行って、自治体の担当者まで情報が降りてくるのに時間がかかっていたからです。前日の夜に翌日の休校が決まることが多く、休校の情報が自治体担当者まで入らず、作業者が現地に行ってしまったケースが度々ありました」。そこで、最も早く情報が上がる公式のWEBサイトから自動でスケジュールを取り込むシステムを構築。これにより、休校期間と作業期間が重複せずに済むようになった。細かな作業でも、約12万台となると膨大な時間を要する。端末ごとに作業状況を記した「チェックシート」を書類として提出した際も一苦労だった。出力したチェックシートが入ったダンボールの山を見て、アカウント営業は改めて本案件の規模の大きさを実感した。

幾多のハードルが待ち構えていたが、だからこそ無事にすべての端末の設定を終えた時の喜びは格別だった。その功績が認められ、オール富士フイルムビジネスイノベーション特別表彰受賞にも至ったのだ。「今回の案件は、画期的な技術を用いて成果を出したわけではなく、アカウント営業やカスタマーエンジニアをはじめ、富士フイルムBIジャパンが一つのチームを組成し、メンバー全員が気持ちを一つにして同じ方向を向き、愚直に前に進んでいくことで成し遂げました。当社の強みでもある組織力を最大限に発揮して大規模な案件を完遂したことを評価された結果だと認識しています」。

大規模案件に携わった経験を生かして、
ソリューションサービスのさらなる提供を目指す

200万人以上の人口を有する自治体の大規模案件に真正面から挑み、プロジェクトを完遂したプロジェクトのメンバーたち。これまでは複合機を中心とした取引で、ソリューションサービスを提供した実績はなかったが、この案件を通じて確かな爪痕を残した。「当初、受注した当社に対して、この自治体のお客様からは『本当にできるのか』と思われていたかもしれません。先に話したとおり、競合他社がこの自治体と長きにわたって取引を重ねていたため、私たちを新参者のように捉えていたのかもしれません。しかし、大きなトラブルもなく、スケジュール通りに約12万台もの端末を再設定していく姿を見て、感謝の言葉を頂戴したこともありました。」と、アカウント営業。「複合機をビジネスのスタートとしている富士フイルムBIジャパンですが、ソリューションサービス領域でこれほど大規模なIT基盤提供も可能です。当社はそれだけの技術力・組織力を有していることが証明できました。引き続き自己研鑽を重ね、お客様への提供価値向上を目指します。」と、SE。

今後もソリューションサービスの提供に尽力していく方針だ。「当時、入社2年目だった私にとって、これほどまでに大規模な案件に携わるのはこのときが初めてで、とても貴重な体験ができたと感じています。私が担当したのは日程の調整やトラブル対応がほとんどでしたが、毎回、SEに助けてもらいながら臨みました。多くの人に支えられながら積んだ経験を生かして、今後はさらに大規模な案件を獲得していきたいですね」と、アカウント営業。プロジェクトマネージャーを務めたSEも、「この案件から学び取ったことは大きい」と語る。「コミュニケーションに力点をおいた戦略により、100人の作業者を統率しながら求められる作業品質と対応スピードを維持することができました。これは私にとって大きな強みとなることでしょう。引き続き、コミュニケーションを主軸にしたマネージメントを行い、プロジェクトマネージャーとしてキャリアアップを目指していくつもりです」。

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