STORY09

コロナ禍での休業要請に応えた事業者のために。
マルチクラウドで、自治体向け大規模電子申請システムを開発。

お客様を成功に導く懸け橋BRIDGE FOR INNOVATION

背景
コロナ禍の緊急事態宣言により、休業および営業時間短縮の要請を受けた大規模商業施設や飲食店事業へ、素早く適切に協力金を支給する体制づくりが急務
お客様の課題
一刻も早い協力金の支給に対応できる、高品質な電子申請システムのスピーディーな開発
富士フイルムBIジャパンの解決策
中央省庁向け大規模電子申請システムの開発実績を活かし、SalesforceとAWSを組み合わせたマルチクラウドによる大規模電子申請システムを実現

某自治体の協力金事業を受託していたBPO事業者から、
中央省庁向け大規模電子申請システムの開発実績がある富士フイルムBIジャパンに白羽の矢が当たった。
さまざまな要求に応えるため、これまでに開発実績のあったSalesforceにAWSを組み合わせたマルチクラウドによる開発を提案。納期・品質ともに高水準で達成したことにより、お客様から高い評価をいただいた。

MEMBER

  • SYSTEM ENGINEER2012年入社
    2021年再入社

  • SYSTEM ENGINEER2018年入社

大規模電子申請システムを開発・
導入にかけられるのはわずか2ヶ月。

顧客から業務プロセスそのものを受託し、業務の企画・設計やシステムの導入、人員配置、そして業務の遂行までそのすべてを担うことで顧客の組織運営を支援していくBPO(Business Process Outsourcing)。大規模な業務効率化やコスト削減が実現できることからアウトソーシングの新たなスタイルとして大きな注目を浴びており、数多くの企業や自治体が導入を進めている。富士フイルムBIジャパンはこれまで、BPOにおけるシステム導入やDX化などのニーズに応えてきた。今回の案件は、BPO事業者から要請を受けたことに端を発する。プレセールスSEは、受注の経緯についてこのように語る。「新型コロナウィルスの感染拡大を受けて緊急事態宣言が発出され、各自治体が大規模商業施設や飲食店事業者に対して休業や営業時間短縮等の要請を行いました。事業者にとって、休業要請への協力は倒産リスクを高めることになってしまう。そこで自治体は休業要請に協力した事業者に対して、協力金を支給する事業を実施しました。この協力金事業を受託していたBPO事業者から要請を受け、電子申請システムの開発・運用を富士フイルムBIジャパンが担うことになったのです」。

BPO事業者が富士フイルムBIジャパンに白羽の矢を当てたのは、2016年から中央省庁向けに大規模電子申請システムを開発・運用していた実績を評価してのことだった。大きなハードルだったのは、そのときすでに協力金事業は4度実施されており、その際は他社が開発した電子申請システムが導入されていたこと。第5回協力金事業における電子申請システムの開発を受注した富士フイルムBIジャパンには、運用中の電子申請システムのデザインを踏襲することはもちろん、運用中システムの問題点をすべてクリアし、さらに完成度の高いシステムを作り上げていくことが求められていた。開発期間はわずか2ヶ月。富士フイルムBIジャパンは15名体制のプロジェクトを立ち上げ、本案件に臨んだ。

複数のクラウド型プラットフォームを組み合わせた
「マルチクラウド」のアイディアで、お客様の要望を実現。

第5回協力金事業で運用する電子申請システムの開発にあたって、お客様は「大容量ファイルを多数格納できるシステムにしてほしい」と要望を出した。当初、プラットフォームは開発実績があるSalesforceを使用する予定だったが、単体のプラットフォームではコストがかさんでしまう。そこで富士フイルムBIジャパンが導き出した提案が、Salesforce とAWS(Amazon Web Services)を組み合わせる「マルチクラウド」だった。さらに、短納期での開発を実現に向けて顧客の要望を的確に反映できるアジャイル手法を採用するなど、迅速な決断を重ねていく。「私たちはSalesforceのメーカーでもAWSのメーカーでもありません。お客様のビジネスに革新をもたらすことを使命としており、だからこそ、常にフラットな視点で最適なプラットフォームを選択し、最適な構成でシステムを開発することができるのです」。加えて、中央省庁向け大規模電子申請システムの開発で蓄積した技術を活かせたことも、富士フイルムBIジャパンの大きなアドバンテージとなった。「過去のプロジェクトで得た知見を次に活かし、これまで以上に価値の高いソリューションをお客様に提供していく。これこそが、当社最大の強みと言えるかもしれません」。

もちろん、すべてがスムーズに進んでいったわけではない。特に今回は、納期が少しでも遅れれば、その分、事業者への協力金支給が遅れてしまうことになりかねない。自治体は大きな使命感を背負って協力金事業を展開しており、その思いを受け止めながらの開発はプロジェクトメンバーに大きなプレッシャーを与えたという。「当然のことですが、自治体は国民の利益を優先させます。特に今回の協力金事業は、国民の注目度も高い。もちろんプレッシャーはありましたが、私たちも『自治体の先にいる事業者のために』という思いを抱いて開発を進めていきました」。

国や行政がユーザーを対象に使用するシステム――つまり「BtoGtoC」のシステムを開発した事例は豊富に持っていたが、これほどまでに国民から高い注目度を浴びている大規模な事業に関わったケースは初めてだ。そういった意味でも、今回の案件は富士フイルムBIジャパンにとって大きな挑戦だったのだ。

第5回に続いて、第6回協力金事業も受注。
「お客様の期待に応え、事業者を支える」という思いが原動力に。

このように、あらゆる点においてこれまで経験したことのないイレギュラーな案件であったが、さらに想定外の出来事が起こった。その一つが、お客様からいただく課題・要望の膨大さである。1年単位で進めていく開発プロジェクトであっても、表面化する課題や変更要望は通常数十件程度。しかし今回の案件は2ヶ月という短納期ながら、百件を超える課題や変更要望が上がっていたのだ。「先に申し上げた通り、協力金事業は当社が受注した段階で複数回実施しており、これまでの協力金事業で使用した電子申請システムは他社が開発していました。そのため、運用中のシステムで出た課題や要望が、当然当社にも寄せられたのです」。すべての課題・要望を一つずつ順番に応えようとすると、到底納期が間に合わない。そこでプロジェクトマネージャーは、日々上がってくる課題・要望を整理し、カテゴライズ化することで解決していった。「似た要求や同じ要求が複数上がってくることも多く、お客様自身も課題を整理しきれていないことがわかりました。これらを当社がイニシアチブをとってマネジメントすることで集約でき、効率的に開発を進めることができました。中には難しい要望もありましたが、代替案を提示するなどして、すべての要望に応えていったのです」。短納期のため、開発においても適宜、開発行程を整理・取捨選択する必要があった。「15名体制で臨みましたが、それでも圧倒的に時間が不足していました。とはいえ、申請時に支給する協力金に1円のミスがあっても許されません。何が必要で何が不要なのか、即座に判断して行動に移す必要がありました」と、SEは振り返る。

こうして、全神経を集中させて電子申請システムの開発を進めていく中、ある連絡が入った。「緊急事態宣言が延長されたため、第6回協力金事業を実施することになった。次もぜひ開発をお願いしたい」。しかも納期は2週間と、さらに短縮された。お客様は「富士フイルムBIジャパンならできる」と期待して、指名してくれたのだろう。お客様が期待してくださる以上、協力金を必要とする事業者のためにも応えていこうと決断した。「2週間という短納期に応えるには、これまで以上の判断力と行動が求められました。私たち全員がそれこそ薄氷を踏む思いで、本案件を乗り切っていったのです」。

全国に拠点をもつ富士フイルムBIジャパンの強みを活かして、
これからも社会のニーズに力強く応えていく。

今回の案件を担当したSEは、まさに「修羅場をくぐり抜ける」と言っても過言ではない経験をしたことになる。彼らがどれほど大きな功績を残したのか、それは、お客様の評価を聞いただけでも、十分に伝わってくる。「第5回・第6回の電子申請システムを納品してしばらく経った頃、『これだけの規模のシステムで不具合がないのは初めてです』という言葉をお客様から頂戴しました。これは私たちにとって最高の褒め言葉です。納期と品質を高水準で達成したことで、プロジェクトの完遂力と技術力を高く評価されたのです」。

そして、この案件を乗り越えたことは、プロジェクトメンバーであるSE一人ひとりに大きな成長をもたらした。「私自身、今回の案件で新たに取り組んだ技術要素が多数あります。特にマルチクラウド構成でアプリケーションを開発した事例は初めてで、『SE一人ひとりが自分自身の開発スキルを高める』という意味でも、本案件は非常に有意義であったと思います」と、プレセールスSE。SEも「当時の私は入社4年目の若手SE。短納期の難しい案件でしたが、先輩SEの動きを見ることで、『開発工程において何が重要で何を優先すべきか』を学び取ることができました」と、成長の実感を語った。

最後に、今後の展望についてプレセールスSEに聞いた。「今回の案件を通じて、私たちはまた一つ、新しい実績を残しました。電子申請システムの提供を通じて、自治体だけでなく、その先にいる事業者を支援できたことを、私たちは誇りに感じています。一方、プレセールスSEの立場から考えると、課題も残りました。当社は全国の主要都市に拠点を構えており、すべての拠点に営業担当者とSEが在籍しています。この強みを活かせば、全国のお客様のニーズに応えることができるはず。今後は、本案件の事例を全国の拠点で共有し、より多くのお客様に当社の強みを発揮できるよう、さらなる体制の強化を進めていきたいですね」。

新型コロナウィルスの感染拡大は社会に大きな打撃を与え、現在も自治体は多くの事業者に向けて、さまざまな支援を行っている。SEは、「このような社会混乱は二度と起きてほしくありませんが、だからこそ万全の体制を整えて、何が起きても力強くお客様のビジネスをサポートしていくつもりです」と未来に向けた決意を聞かせてくれた。

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