STORY10

すべては、開発力向上に貢献するために。
製造業DXの実現に向けた
基幹システムの構築。

お客様を成功に導く懸け橋BRIDGE FOR INNOVATION

背景
ビジネスモデルの変革に伴い、抜本的な事業構造の革新が求められていた
お客様の課題
製品開発業務の全体最適に向けた基幹システム刷新の実現&さらなる製品開発力の向上
富士フイルムBIジャパンの解決策
お客様業務プロセスを主軸に製品ライフサイクル管理システムを用いた基幹システムの構築

重工業メーカーのお客様の最重要課題は、ビジネスモデル変革の本格化を契機に、約30年の間に複雑化してしまった基幹システムの刷新を図ること。将来のビジネスモデルとしてあるべき姿を描くべく、全体構想の策定から着手。
それを元に、お客様業務プロセスを主軸に置いた製品ライフサイクル管理システムに富士フイルムBIジャパン独自の商材を組み合わせ、企画-設計-生産-保守に至る製品ライフサイクルに渡って発生するすべての情報を統合管理する次期基幹システムの構築・導入を実現した。

MEMBER

  • SYSTEM ENGINEER2009年入社

  • SYSTEM ENGINEER2006年入社
    2019年再入社

託されたのは、ビジネスモデルの変革に伴う、
大規模な基幹システムの刷新。

事業拡大と業務内容の変化に伴い、30年近くかけて継ぎ足され複雑化してしまった基幹システムに、お客様は頭を悩ませていた。周辺システムの多くは、部門ごとに独立した形で構築されていたため、各データを連携させるためのインターフェースが存在しておらず、機能の改修も容易にできない状況だった。加えて、人手を介したアナログ業務が恒常化しており、基盤の老朽化に起因する問題にも直面していた。基幹システムの刷新を図るべく、コンサルティングファーム数社に相談し支援を受けるも、現状見えている業務課題の改善提案に留まるのみで、10年、20年先を見据えた抜本的なアプローチには繋がらなかった。

そんなもどかしい状況が5、6年ほど続いたのち、お客様は一つの大きな節目を迎えていた。事業の柱の一つである科学技術分野において、従来の事業構造を革新し、これまで以上にスピード感のある経営判断と業務推進を行うことが不可欠になったのである。新たな価値創造を目指すべく、ビジネスモデルの変革を進めていく上で、今こそ、基幹システムの刷新を図らなくてはならない。そう考えたお客様からSEたちのもとに連絡が入った。「プライムベンダーとして、次期システム構築の提案をお願いできないだろうか?」。この背景には、富士フイルムBIジャパンが製造メーカーとして手掛けてきた業務改革の案件実績への評価と共に、「今度依頼する時は、同じ製造業に携わるベンダーに託したい」という、重工業メーカーのお客様ならではの強い想いがあった。「取り扱う製品は違っても、自分たちと同様に、ものづくりを通じて世の中に唯一無二の価値を届けるベンターなら、事業内容についてはもちろんのこと、直面している課題や今後目指す方向性についてもより深く理解し、真の意味での解決策を導き出してくれるだろう」という大きな期待があった。お客様が利用中の図面や仕様書といったものづくりに必要な技術指示文書を管理するシステムを富士フイルムBIジャパンが構築していたことから、ここに至る信頼関係も相まって今回の案件につながった。

2019年初頭より、SEたちはお客様の要望を丁寧に汲み取りながら提案活動を行った。それを経て、同年5月に正式に受託することとなり、製造業DXの実現に向けた基幹システムの構築プロジェクトが本格的に始動した。本案件のプロジェクトリーダーを務めたSEは、過去10年に渡り、海外にも拠点を持つ企業の基幹システムの刷新に携わってきた実績経験を持つ。だが、今回ほど大規模な案件において、包括的にけん引する立場を担うのはこれが初めてのことだった。さらに、お客様は「全社を挙げて取り組み、3年以内に成し遂げること」を課せられており、この日程をずらすことは断じてできない。先行き不透明ではあったが、これまでに培ってきたスキルや経験を総動員し、チーム一丸となって全力で打ち込めば、お客様の最重要課題を解決する道が必ず拓けると考えた。「将来のビジネスモデルとしてあるべき姿を描く構想策定フェーズ(計画具体化フェーズ)からプロジェクトをスタートし、次期システムの方向性をお客様と一緒に練り上げていきました。お客様の開発力向上に貢献し、ひいては、日本の科学技術分野の発展に寄与するべく、システムを無事リリースするまでの3年間は、このプロジェクトに身を捧げることを自身に誓いました」。

課題解決のカギは、
経営視点&現場視点の融合。

お客様の次期基幹システムは、今後数十年に渡って全社で利用されることになる、極めて重要な開発基盤である。その刷新を図るためには、システム全体の規模感を把握すると共に、各部門の業務内容や流れを的確に捉えることが欠かせない。そこで、各部門のキーマンや幹部候補など、企業の未来を担う精鋭メンバーを選出してもらい、検討会を実施することをお客様に提案した。これに賛成したお客様は直ちにアクションを起こし、約30名の精鋭メンバーを集めた。お客様先には専用のプロジェクトルームが設置され、メンバー全員が膝を突き合わせて検討を繰り返した。提案や見積もり、出荷、アフターサービスに至るまで、各部門における一連の製造プロセスについて、精鋭メンバーへの入念なヒアリングを重ねながら、図面管理で培ってきた業務ノウハウをベースに、お客様と共にあるべき業務プロセスの全体構想を描いていった。「1つの手戻りが、致命的なスケジュールの遅延につながってしまうこともあります。そのため、検討会には精鋭メンバーの方々だけでなく、プロジェクトオーナーであり全体業務を俯瞰している社長補佐にも毎回ご参加いただき、業務成立性の確認と経営層のコンセンサスをその都度取りながら進めていく形を取り、経営視点と現場視点を融合させつつ、掘り下げていきました」。

徹底した現状調査と課題整理をもとに検討を重ねた末、SEたちは、基幹システム全体に渡って発生するさまざまな情報を一元管理し、モニタリングできる環境の必要性を訴求した。その解決策として、製品ライフサイクル管理システム「PLM(Product Lifecycle Management)」を導入し、独立して混在する周辺システムとの連携を図ることを提案。PLMシステムは、企画・開発設計から生産、調達、物流、販売、保守、廃棄に至る製品ライフサイクル全体を総合的に管理できる、製品開発のための基幹システムである。製品ライフサイクル内で生じるあらゆる技術情報を集約してエンジニアリングチェーンをつなぎ、ものづくりのデジタル基盤を強化することによって、製品開発力を高め、ひいては企業競争力を強化することが可能になる。かねてよりお客様もPLMシステムの導入について検討を進めていたが、パッケージ化されたPLMツールを単純に導入するだけでは、自社の業務プロセスに合ったシステムを構築することはできないため、導入の実現には至らなかった。「お客様の積年の課題を解決に導くために、業務プロセスを主軸においたカスタムアプリケーションの提供と、利用中の既存システムとのシームレスな連携を実現することをご提案し、了承をいただくことができました。連携システムの1つには我々が導入していた文書管理システム『ArcSuite』も含まれており、既存システムの価値向上にも貢献できたと思います。」

揺るぎない協力体制の構築により、
多様なステークホルダーの一致団結を実現。

プロジェクトは順調に進んだかのように見えるが、その裏には、SEたちの並々ならぬ努力があった。その一つに、業務理解のために行った業務ルールの習得が挙げられる。エンジニアがチームを組んでシステム開発に取り組む際、品質や保守性を確保するためにコーディング規約を作成し、共通のプログラミング言語を使って開発に取り組むのと同じように、お客様の企業では、重工業メーカーとして独自に定めた業務ルールや、極めて専門性の高い共通言語がある。それらを正確に理解することができなければ、お客様の意図や要望を汲み取ることは期し難い。このことにいち早く気づいたプロジェクトリーダーのSEは、構想策定フェーズを推進する合間を縫って、お客様の業務ルールを定めた数百ページにも及ぶ規定・規約を何十回と熟読した。最終的には、どの業務ルールがどの資料の何ページに記載されているかを空で言えるほどに理解を深め、お客様と同じ目線に立ち、意思疎通を図ることができるようになった。

プロジェクトリーダーのSEにとって最大のチャレンジは、総勢80名にも及ぶ多様なステークホルダーを取りまとめ、プロジェクト推進を主導する役割を担いながら、いかにして想定外の状況に対応するかということだった。3年以内という希望納期を遵守するために、2つのフェーズに分けて段階的リリースを行うことで合意してはいたものの、検討会を重ねるごとに、水面下に潜んでいた課題が次々と浮き彫りになり、基幹システムを刷新するために網羅すべき領域は、当初の2、3倍にまで膨れ上がっていた。どれか一つでも欠けてしまえば、一連の業務が成り立たなくなる。それがこのプロジェクトの特性であるがゆえ苦境に立たされたが、役割分担を適切に行えば、突破口を必ず開くことができると考えた。顕在化した課題の一つひとつに対し、然るべき対策を講じつつ、システム要件を固めることをSEの最優先タスクとし、協力パートナー3社との綿密な連携体制のもと、システム開発を進めていく方針を決めた。

各フェーズにおいて、どうすればシステムリリースを無事成し遂げることができるか。この最重要課題について、お客様や協力パートナーと力を合わせて知恵を出し合いながら、調整を図っていくことに最も苦心したという。「案件の規模が大きくなればなるほど、そこに携わる人々の考える正解はさまざまで、異なる意見や考えを集約するのは大変難しいものです。しかし見方を変えれば、今回のような大規模プロジェクトは、人と人との関係性の中で成り立つ生き物のようなものでもあります。ぶれない姿勢で真摯に向き合っていけば、相互理解を深めながら、信頼関係を育んでいけるということを、身を持って初めて知りました。歩み寄る姿勢が醸成されていくと、今日無理だと思っていたことも、明日可能になるということが起きてきます。一つずつ地道に取り組んでいくうちに、やがてお客様や協力パートナーという関係性の垣根を超えて、ステークホルダー全体で協力し合う体制が整い、一致団結してこの難題に挑むことができました」。

お客様との揺るぎない関係性を構築してきた中で、忘れられない思い出があるという。コロナ禍に突入する前年の夏、一次リリースに向けて試行錯誤を重ねていた頃、お客様の事業所内で、毎年恒例の地域の夏祭りが開催されると聞いた。興味を持ち、プライベートで出かけてみると、お客様先のプロジェクトメンバーの屋台が出店していた。歓迎されたその場で業務の話は一切なく、和気あいあいとしたムードの中、個々人の話が繰り広げられた。「そこには、本プロジェクトの責任者を担う経営企画部長も参加されていました。会話をする中で、地元も最寄り駅も自分と同じことが分かり、意図せずして、心の距離をグッと近づけることができました。この経験から、SEとして技術的なスキルを磨くのはもちろんのこと、相手を理解しようと歩み寄る気持ちと同等に、自分自身を理解してもらおうと努める姿勢を持つことの大切さを教わりました」。

この案件を進める中、SEたちはコロナ禍の影響も多分に受けた。2020年3月末に一次リリースを無事に終え、二次リリースに向けた活動を開始した頃、従来、お客様や協力パートナーと対面で行っていた詳細設計レビューをオンラインで行わざるを得なくなった。「共通認識があれば、スムーズに行えたかもしれませんが、遠隔で複雑なロジックについて伝え、意見を交わしながら、認識をすり合わせていくのは非常に難しいものでした。テストに関しても同様で、対面ならすぐにできることも、オンラインだとなかなか思うように進めることができず、悩んだこともあります。しかし、プロジェクトの進行を止めるわけにはいきません。互いに実感を伴った共通認識を得られるよう、可能なかぎり、お客様や協力パートナーの元に足を運び、お顔を合わせてお話できる機会を持たせていただきました」。どれほど高いハードルが目の前にたちはだかっても決してあきらめず、前向きに取り組んできたSEたち。その不断の努力が実を結び、構想から1年半という短期間で主要機能を一次リリースし、その1年半後には、当初計画したすべての機能をリリースするに至った。

次なる目標は、
「DXソリューションを強みとする企業」としての
認知度向上への貢献。

数々の難題に立ち向かい、共に手を携えながら乗り越えてきたSEたち。2022年6月末、予定通りにシステムの二次リリースを成し遂げた後、お客様からは「構想策定を含めて3年弱という短期間で、これだけの大規模な基幹システムの刷新を実現することができ、大変感謝しております」と嬉しい言葉を頂戴したという。SEたちは、リリースの翌日よりシステム運用・保守の対応も行った。現在は、継続案件に取り組みながら、機能改善や業務範囲の拡大といった次なるフェーズに向けた計画をお客様と共に策定している。

DXソリューションの導入により、壮大な規模の基幹システムの刷新を図り、次期基幹システムの構築を成し遂げたSEたちの功績は、オール富士フイルムビジネスイノベーション特別表彰受賞、富士フイルムホールディングス大賞ノミネートを通じて、社内で広く知れ渡ることになった。「これをきっかけに、富士フイルムBIジャパンが、DXソリューションを強みの一つとする企業であることを広く認知できるよう、尽力していきたいと思います。これと並行して今後は、同僚や後輩に、大規模プロジェクトの推進に関するスキルトランスファーを行い、第2、第3の基幹システム刷新プロジェクトを創出していけるよう、邁進してまいります」。

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